本書は基本的な楽典の知識を既に持っていることを前提としている。 和声学では音程と音階についての知識が特に重要である。 楽典に詳しくない読者のために、ここでは必要最低限の知識を提供し、 読者の便宜をはかる。既に知っている人には復習の意味もあろう。
本書では基本的に長音階としてはハ長調のみ、 短音階としてはイ短調とハ短調のみを用いる。 もちろん必要ならば他の調を使用することもある。
鍵盤で見てみるとよく分かるが、 音と音との幅には、黒鍵を含めると、二種類ある。 広い方を全音といい、狭い方を半音という。 ハ長調では次の譜例の通りである。
ハ長調であれば、鍵盤上で黒鍵を挟んでいれば全音、無ければ半音である。
また長音階・短音階に関わらず、 各音には次のような名称が付けられている。 四角で囲んだ主音、属音、下属音、導音は特に重要な役割を担う。
二音間の距離を音程といい度という単位で表す。
最も狭い二音、つまり同じ高さの音を一度とし、 それより音高差が広がるごとに二度、三度、四度、というのである。 また八度のことを一オクターブともいう。
ところで例えば同じ三度であっても、鍵盤上では間の距離が異なる場合がある。
左は全音二つの幅があるが、右は全音一つと半音一つである。 この二つの音程を区別するために、 前者を長三度、後者を短三度という。 このように全音と半音の数で、その音程の名称が決められている。 これらの関係を表にしたものを、参考のために下記に掲載する。
全音 | 半音 | 音程名 |
---|---|---|
0 | 0 | 完全一度 |
0 | 1 | 短二度 |
1 | 0 | 長二度 |
1 | 1 | 短三度 |
2 | 0 | 長三度 |
2 | 1 | 完全四度 |
3 | 0 | 増四度 |
2 | 2 | 減五度 |
3 | 1 | 完全五度 |
3 | 2 | 短六度 |
4 | 1 | 長六度 |
4 | 2 | 短七度 |
5 | 1 | 長七度 |
5 | 2 | 完全八度 |
増四度は全音をちょうど三つ含むから、 この音程のことを三全音とも呼ぶ。 また完全八度はオクターブともいう。
完全一度、完全四度、完全五度、完全八度をまとめて完全協和音程という。 また長三度、短三度、長六度、短六度を不完全協和音程という。 これら完全協和音程と不完全協和音程をあわせて協和音程と呼ぶ。 協和音程以外の全ての音程は不協和音程である。
なお、八度より広い音程は、八度せばめていうことがある。
例えば完全十二度をオクターブ縮めて単に完全五度と呼ぶことがある。 縮める際に単純に十二から八を引き算してはいけない、ということに注意されたい。 正しくは12-8+1で計算される。 というのも音程は一度から始まるので、0度が存在しないからである。
音程や音階に関する、より詳細な議論は、 楽典や音楽通論で学んでいただきたい。
制作/創作田園地帯
2000/07/25初出
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