これまで低音(=バス)は常に根音であったがそうでない形もある。 根音以外を低音に置くことを和音の転回という。 非転回の原形を基本位置と呼ぶのに対し、 三音を低音にした和音を第一転回和音、 五音を低音にした和音を第二転回和音という。
和音は基本位置が最も安定するのであって、 転回するとその分だけ不安定になる。 よって転回和音の使用には注意が肝要である。
第一転回和音は低音が三音である和音である。 この和音は低音と根音とが六度関係になるので六の和音ともいう。 記号は I6 のように6を添えて示す。 六の和音では根音や五音の重複が良好であるが、 低音である三音の重複も可能である。 しかし属和音の三音は導音であるから三音重複は絶対にいけない。 また省略はいずれも不適である。
主和音や下属和音であれば次の時も三音重複が良好である(しなくても良い)。
六の和音は不協和和音ではないにしても、 それに似た不安定な感じがあるから、 楽曲の最後には用いられない。 六の和音の近くには同じ和音の基本位置があると良い。 また六の和音を使用するときはバスを順次進行で進める方が良い。
六の和音を使用した例を示しておこう。
低音が五音である第二転回和音は四六の和音と呼んでいる。 四六の和音は六の和音よりも不安定感が強く、 楽曲の例でも使用されることが少ない。 四六の和音が使用される場面を示しておく。
1はバスが順次進行する途中として四六の和音が使用されている。 2のように同一バス上に複数の和音を構成する時にも四六の和音が使われる。 いずれにしても次の和音へはバスを順次進行させて進むのが良いが、 2のように同一和音の転回ならば跳越も可能である。 四六の和音は単独の和音というよりも装飾的な意味あいが強いので、 その使用は控えめで特別な場面以外は用いられない。
属七の和音の転回には第一転回、第二転回、第三転回まである。 それぞれ属五六の和音、属三四の和音、属二の和音と称される。 元々の属七は不協和音程という特徴的な音程を持っており、 これを転回しても三和音ほどの変化は起きない。 転回属七はいずれも省略や重複はせず、 バスが順次進行になるようにする。 ただし非転回との連結のように、同一和音なら跳越もできる。 属二の和音の前には属和音をおいて、V - V2 のように用いると良い。
制作/創作田園地帯
2000/08/23初出
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